傍聴記その5-③

 

TRCが指定候補に、何故急ぐのか

 

 市立図書館の指定管理者を決める手続きが進んで、選定委員会の答申に基づいて図書館流通センター(TRC三田)が、指定管理者候補に選ばれました。12月議会にかけられることになりました。

2企業のプレゼンテーションを傍聴しました。候補に決まったTRCは、開館日数・開館時間とスタッフ数については具体的に述べましたが、市が約束していた「新たなサービス」については、電子図書などを挙げたものの、いつ実現するのか、そのためにどのくらいの予算を投入するのか、など具体的なことは全く述べませんでした。また、社員の給与水準も勤務体制も不明です。詳しい提案書があるはずですが、それはまだ明らかにされていません。

さて、竹内市長は一連の議会答弁で、行政に求められるものの一つにスピードがある。一つの施策をいつまでもだらだらと先延ばしすべきではない。図書館改革は私の信念だ。私の任期中に実現したい、という趣旨を述べました。しかし、信念と言いながら市長自身の「図書館に対する思い、図書館への評価」は一言も聞けませんでした。また、来年度に実施しなければならない必然性についての説明もありませんでした。すべてが抽象論で具体的な理由は何も分かりません。一体、何をそんなに急いでいるのでしょう。図書館を来年度から指定管理にしなければならない緊急の必要性がどこにあるか、依然として全くわかりません。

神奈川県逗子市では、指定管理者制度の導入方針を打ち出しましたが、2012年度から4年間かけるロードマップを作り、綿密に検討することにしています。その間に研究と調査と協議とを重ね、早くから仕様書の検討に入り、問題点を次々に洗い出していく手法がとられています。図書館を大改革するわけですから、こういったロードマップによる作業が当たり前のことだと思います。また、三重県松坂市では指定管理者の選定期を前に、新たに就任した市長が1年半かけて市民の声を聴く作業を始めています。市長自らがシンポジウムを主宰し、前市長時代に導入された指定管理者制度を全面的な見直そうとしています。

いずれも根底には、時間をかけて問題点を洗い出し、利用者である市民の声を最大限汲み取る、という姿勢があります。市民の意見を尊重するというのはこういうことです。これこそ首長のあるべき姿です。

 それに比べ、三田市ではあと半年弱で導入するというのに、TRCの提案書などの詳細は公表されていません。プレゼンテーションそのものも、プロジェクターが不鮮明で内容が理解できない不親切のものでした。9月市議会の審議は情報ゼロの状態で行われ、抽象論ばかりで実のある議論は皆無でした。12月市議会には詳細な資料を提出し市民にも公開し、開かれた審議を行ってほしいと切に思います。

 

厚地議員のフェイスブック書き込み

 

話は変わりますが友人から、厚地弘行市議がフェイスブックに書き込んだ文章が送られてきました。

<図書館の指定管理者は図書の流通をする「TRC三田」に決定。これで来年4月から開館日が増えますね。公募に参加したのは結局2社だったので、管理業務は難しいのか、まだまだノウハウを持つ会社は少ないのか。TRCは既に全国で実績があるので、大きな失敗はしないと思いますが、サービス低価にならないようチェックしていくのは、私の仕事です>という内容です(低価は原文のまま)。

ちょっと待ってください。指定管理者にTRCが決定したわけではありません。まだ「候補に選ばれた段階」です。12月議会で本当にTRCに任せてよいかどうかを真剣に討議するのが市議会と市議の役割のはずです。それなのに、厚地さんは「もう決まった」と認識しているようで、審議権を放棄しています。提案内容の精査もせずに何故そんな風に考えられるのでしょうか。市議会基本条例で高らかに謳った市議会の役割、市議の市民に対する責務をお忘れなのでしょうか。TRCが業務を始めた後でのチェック役が市議の仕事と考えているようですが、その前にもっと大切な仕事があります。とんでもない考え違いで、全く理解できません。こんな議員さんばかりではないと信じたいものです。議員の皆さん、どうか真剣に誠実にTRCの提案内容を審議してください。

 

「図書館改革」の裏に労使紛争?

 

知人が三田市の職員労働組合が発行している「市職労ニュース」を届けてくれました。11月4号です。そこに、「……開館時間延長に組合が応じなかったというような発言が見られたが、全く事実と異なる事である」として、「開館時間の延長ならば、現場には現行人数のままでも応じる用意がすでにできている」「……組合側から現行体制での開館時間延長について提案し検討中であるが、当局側は試行する必要性を感じないとして難色を示している」と書かれていました。初めて知りました。

これまで、市議会における市当局の答弁は、民間企業に対する開けっぴろげな礼賛に対して、身内の職員ないし職員組合には厳しい批判が繰り返されました。「日祝日開館の際も人員増を要求された」「開館日の拡大は組合が反対するので直営では絶対にできない」「開館日を3時間延長しようとすれば30人の人員増になる。公務員の勤務体系では不可能」などなどです。また、「開館時間拡大を提案したが組合に断られた」との話も市側から流されていて、ある組合関係者は「そんな提案を受けたことは一度もない」と憤っていました。しかし、組合側からの公式な反論は、私たちのところには聞こえてきませんでした。

その三田市労使の関係ですが、わたしたちは図書館問題にかかわって、「正規司書2名の欠員補充問題」が、数年前から膠着状態にあることを知りました。三田市は「欠員があることは認識している。図書館の直営体制は維持する」との姿勢ながら、正規司書の補充には応じず、組合側も正規職員補充に固執し交渉は暗礁に乗り上げている状態だ、というのです。

社会教育委員の会への諮問から答申に至る経緯に、不自然な「方針変更」があるという指摘が市議会で行われました。市の方針が「諮問当初」と「答申までの間」では大きく変わったのは何故か、という疑問です。三田市当局は「そういう事実はない」と否定していますが、この労使間の紛争を考えると分かり易いのです。図書館運営を民間に委託し、三田市の職員から「司書職」を無くしてしまえば、問題は一挙に”解決”します。三田市に司書職はいなくなるのだから、欠員補充の必要も消滅する訳です。組合に対して誠実な態度とは言えないけれど、市にそういう狙いがあった、図書館問題の根底にはこういうことがあった、と考えると道筋はよく見えてきます。

つまり、「図書館改革」という大義名分は付け足しで、市当局としては、労使紛争を一挙に解消することが主たる狙いだった。組合は開館時間の拡大など、「改革」という大義名分を前に、人員問題を持ち出せなくなって動きを封じ込められている――そういう図式だと解説する事情通もいました。

そこへ、上記のような組合の反論です。この点については徹底的に論議をしてほしいと思います。図書館問題が実は労使紛争のとばっちりだとしたら、市民にとってはまったく迷惑な話です。労使紛争解決のために市民の利益を犠牲にするなどもっての外。職員組合が何故もっと早く発言しなかったのかわかりませんが、開館時間について「対案」を示したということですから、労使で真剣に協議をしてほしいと思います。職員組合の皆さん、市の直営でもこれだけのことができるという具体案を、是非市民に示してください。

三田市の図書館を考える市民の会ホームページ

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