TRC事業計画書・提案書への意見

 ご承知のことと思いますが、最初に三田市の図書館とTRCのこれまでのかかわりについて述べておきます。

TRCは東京に本社のある図書館向け書籍販売の大手で、図書館流通の中心的な存在です。新刊書の発売から1週間程度で、カバーやラベルなどを装備し、スピーディーに納入する実力を持っています。書誌データを網羅したいわば書籍の身分証明書である「MARC(マーク)」の販売でも実績があり、1996年からは図書館運営の受託業務を開始し、2012年4月現在、全国で公共図書館329、学校図書館11、専門図書館10(計350館)の運営を受託しています。図書館の指定管理企業としての実績は群を抜いています。

TRCはまた、三田市立図書館と三田市立学校の図書館へ、新規購入本のほとんどを納入している会社でもあります。市立図書館がスタートした1990年に納入権を獲得して以来ずっと、図書館に本を納めています。7年ほど前からは三田市立学校の学校図書館の本もほとんどすべてがTRCの扱いになりました。前身の公民館図書室に本を収めていた三田市内の書店は、まず図書館から締め出され、ついで学校図書館も失ってしまったのです。 

そのTRCが今度は市立図書館の運営も一手に引き受けることになりつつあるわけです。この点をわたしたち市民の会は最も危惧しています。 

①選書と図書納品方式の変更(21、22、61ページ)

 現状 複数の担当司書が「週間全点新刊案内」やメディア、書店店頭の出版情報、トピックス、社会情勢、地域情報、利用者との対話などを総合して、「購入推薦候補」を決めます。これら候補について、同じ分野の本の所蔵状況、利用頻度、価格などを調べ、「購入すべきである」と最終判断したものを、毎週木曜日に開かれる「資料選定会議」に出します。この他、TRCからも新刊書の購入推薦リストが送られてきます。これには「見計らい送本」といって本の現物が添えられています。選定会議は図書館長が主宰し、幹部職員、分館・分室代表も参加し、推薦された書籍について綿密に意見を交わして購入の可否を決定します。一方、利用者からの要望があった資料についても選定会議に諮られ、多くの利用が見込まれると判断されれば購入が決定されます。

購入が決まった資料はオンラインでTRCに発注されます。TRCは、「装備はせず」にマークとともに本を図書館へ送ります。届いた本は三田市駐在のTRCスタッフが、図書館本館内で装備作業(全面フィルムコート、分類ラベル記載、貼付)を行い、貸出可能な形に整えます。選定から貸出可能になるまでは、こういう流れになっています。

 図書納品方式の変更 TRC提案書ではこの納品方式を変更するとしています。TRCは来年度から購入する新刊書に「バーコード一体型ICタグ」を貼付するとしています。それに合わせて現在、図書館本館で行われている装備作業はすべてTRCの物流拠点基地・新座ブックナリーで行い、「装備付きで納本」する方式に変更するとしてします。同時に「新刊書の見計らい送本」もやめます。

 選書については、「三田市の資料収集方針に基づいた資料収集を行う」と記述されていますが、その方法については、「専用の選書ツールを独自に作成の上、活用します」とあるだけで、具体的にどのスタッフがどういう形で作業をするのかは一切書かれていません。「人」ではなくTOOL-i(ツールアイ)などの「道具=システム」を使った方式になりそうです。恐らくはTRCのお勧め図書である「見計らい送本リスト」を元に選書されることになるのだと想像されます。

見計らい送本とは、TRCが「購入するにふさわしい」と判断した新刊書の現物を送ってくるもの、つまりは「TRCのお勧め本」です。各図書館はその中から購入する本を選ぶシステムです。今回、見計らい送本を中止するのは、三田図書館の場合、購入率が50%以下と低いことが理由です(全国平均では70%以上が購入されているのに三田は半分以上を返本している)。三田図書館は業者のお勧めに安易に乗らず自主判断で選書を行なってきた証拠といえます。

TRCが指定管理者になれば、TRCスタッフが選書してTRCに発注することになります。「見計らい送本」をやめて「選書業務を効率化する」と書かれていますが、企業の論理からすれば至極当然と言えます。自分たちに選書権があるのだから、オンラインでリストを見て選べば十分、ということなります。

しかし、選定リストをチェックする三田市の担当者は、これまでのように現物を見ることができなくなります。極端に言えば書名と著者・簡単な内容のデータしかないことになります。恐らくはTRCの選定がそのまま通ることになるでしょう。納品方式の変更は、そのままTRCにとっては選書の効率化、三田市にとっては選書チェックの困難化になります。意地悪い見方をすれば、この方式変更はTRCが自分の売りたい本を売りつけるシステムということになります。 

 選書と図書納品方式の変更の関係を詳細に質問してください。具体的にTRCの誰が、どういう組織が、購入資料を選定するのか、合わせて三田市当局には、チェックと最終承認をどこの部署のどういう資格の職員が担当するのか、を質していただくようお願いします。また、三田市は「チェックシステム」を確立すると言ってきました。どんなシステムにするのかを明確にさせてください。

 ★競争原理が働かない 

TRCが指定管理者になると、発注者と納入者が同じという形になります。競争原理の全く働かない異常な取引形態です。本代に加えてマーク代金、装備費、そして今度はICタグ(後述)代まで、すべてがTRCの収入になります。再販制度はあるものの書籍にも値引き競争が起こっています。この際、三田市は地元の三田市図書納入協力会からの調達を指導すべきだと考えます。学校図書を含めれば2千数百万円というお金がほとんど市内に落ちないのは、「地産地消」の観点からも間違っています。 

★地元経済振興(60ページ)

 地元経済振興については極めて簡単に、「より多くの市内地元企業に業務の発注ができればと考えております」と書かれているだけです。「雑誌の納入」については、地元書店に再委託する方針だと述べられています。TRCは第1優先候補に決まる前に、すでに図書納入協力会にその旨の申し入れをしたと聞いています。選ばれることを見越しての接触で、このこと自体にも違和感を持ちます。従来、図書館は雑誌とリクエスト本などを地元書店から購入しています。地元振興と言いながら、リクエスト本は自社に取り込み雑誌だけを地元書店に残すというのですから、従来よりも縮小され地元振興とは逆行します。図書納入協力会では困惑し対応を決めかねているようです。三田市は資料の地元調達を増やすように指導すべきだと考えますし、何より三田市図書納入協力会の意見を聞くべきです。

是非詳細に質問し地元振興を図る方向で努力していただきたいと思います。

★マーク(MARC)、装備つき納本にも問題(41ページなど) 

マーク(MARC)については、これまで通り自社TRCのものを使うと書かれています。しかし、TRCのマークに問題が多いという指摘は、学校図書館ボランティアの皆さん達からよく聞きます。「分類」に問題があるというのがその主なものです。「冤罪」に分類すべきものが「選挙違反」になっていた(志布志事件関係)、盲導犬関連だと一律に「福祉」に入れられてしまうなどです。マークは決してTRCの独占物ではありませんし、また言うほどに高い評価を受けているわけでもありません。日本で最も権威ある国立国会図書館のマークが無償で提供されるようになっています。これを採用すればマーク代が節約でき、その分を資料購入に回すことができます。図書館改革という観点から、この点も検討していただきたいと思います。

前述の通り、現在三田現地で行われている装備作業は、新座に移されることになります。TRCの装備についても、ラベルの位置が不適切で図書の装丁やデザインを損なったり、カバーの付け方が杜撰でしわが寄っていたり、という指摘があります。三田現地で作業をしている現在は、発見すればそれらの点を指摘しやり直させることも可能です。しかし、新座で一括装備となれば、TRCのマニュアル通りにパートの主婦たちが担当することになるのでしょう。無神経で杜撰な装備が増えかねません。

国立国会図書館マークの採用、三田現地での装備維持を主張してください。

 

②除籍(蔵書の廃棄・処分)(30ページ)

 三田市は水準書には、除籍業務として「別に定める基準等に基づき除籍すべき資料の候補を選定し、市に協議を行う」「市が除籍を決定もしくは承認した資料は、市との協議により廃棄その他の処分を行う」と書いています。一方、TRC提案書では「適切な蔵書構築を実現するためには、資料収集と連動した計画性の高い除籍作業も重要な柱となります」「除籍業務の一環として……本のリサイクルフェアの年1回の開催を、三田市側と協議の上、行っていきたい」と記述されています。「除籍そのもの」について、三田市と協議するとは一言も書いていません。協議するのはリサイクルフェアについてだけです。

9月に改正された図書館条例では、市に残す業務は「選書」だけで、「除籍」は含まれていません。そもそも図書館条例第4条の「業務」に、元々「除籍」という文言がないのです。11月18日にまちづくり常任委員会で配布された「市立図書館条例の一部を改正する条例の概要」にも追加規定はありません。つまり「除籍」については明文の規定がないままです。水準書にある「別に定める基準等に基づき」とは何を指すのでしょう。一般的な市の備品の廃棄のことを指しているのでしょうか。まったく分かりません。

三田市当局は「市と協議せよ」と言っているわけですが、条例上の根拠がない以上、「除籍は当方でやります」というTRCの考え方・対応が正しいことになります。市側は「除籍も市の責任で」と議会で答弁してきましたが、結局どうするのでしょうか。

除籍について明確にし、条例で明確に規定するようにしてください。

以上見てきたように、TRCが指定管理者に選定されると、「選書から除籍まで」のすべて、三田市の「知的文化」の源泉の差配を、東京に本社を持つよそ者企業に委ねてしまうことになります。こんなことが許されて良い訳がありません。運営を任せるなら図書の購入は他から、図書の購入を続けるなら運営は最低でも他の企業にと、指定管理と図書の購入を分離すべきだと考えます。 

③開館日・開館時間(20、12、13、14ページ)

 開館日の設定について、闇雲に増やせばよいというものではないと考えますが、本館と分館が9:00-20:00なのに対し分室は10:00-18:00なのは何故でしょうか。分室だけを別にする特段の理由でもあるのでしょうか。開館日数増と開館時間延長で「利用環境を拡充する」というのが、今回の指定管理移行の最大の目的なのですから、分室だけ別にする理由は見当たりません。

理由を聞いてください。

 また、各館の勤務シフトを見ると本館は9時開館の30分前から「開館準備作業」が組み込まれていて、8時30分が出勤時間になるものと考えられます。しかし、分館・分室には「開館準備作業」の時間は設定されていません。スタッフは開館時間の9:00あるいは10:00に出勤することになりますが、これで仕事がうまく行くか、大いに疑問です。利用者と同時出勤になりかねません。さらに各館の「閉館業務」は、まだ利用者がいる(と想定しなければならない)閉館時間の15分前から行う設定になっています。この時間帯に「その日にあった事項などを集約するミーティングを開きます」と書かれています。利用者がいてもミーティングを行うということでしょうか。シフト通りでは開館・閉館業務ができず、「サービス早出」や「サービス残業」をさせることになる恐れがあります。それとも、20時前(分室は18時前)にはもう誰もいないという想定ですか。

勤務シフトの整合性を質してください。

④人員数・勤務条件・雇用等(12、13、14、17、18ページ)

 開館日数は本館が271.5日から352日へ、分館が238日から340日へ、分室が164日から340日へ大幅に増えます。開館時間も延長されますので、「開館している時間」に換算すると、

本館3872時間(約1800時間増≒90%増)

分館3740時間(約1836時間増≒96%増)

分室2720時間(約2000時間増≒280%増)

という途轍もない増え方になります。

 本館・分館でほぼ倍、分室で3倍近くになった開館時間を、現行(職員61人)より2人減の59人でまかなうというのがTRCの計画です。現行直営での勤務シフトが分からないので、比較検討ができませんが、常識的に見て極めて無理のある勤務体制だと思います。民間の創意工夫とはどんなものでしょうか。

 この点は具体的データを提示させ、詳細に質してください。

 ★欠員時のバックアップ 

TRCは、不時の欠勤者が生じた場合、三田図書館の非番スタッフの臨時出勤を極力避け、尼崎、神戸などからの応援要員で補充する、としています。「休日は心も体も休め、より良い状態で次の勤務に備えることができるように、配慮しています」と書かれています。大変結構なことです。が、常識的に考えれば、休日出勤をさせたら代替休日を与えられないほどシビアな勤務シフトだということではないでしょうか。

11月18日のまちづくり委員会では、「逆のケース」はどうするのかという質問がありました。尼崎、神戸はいつでも応援要員を出せる余裕たっぷりのシフトを敷いているということになりますから、そのことも含めて詳しく聞いてください。

 ★研修などの時間をどう生み出す 

入社時の基礎的な研修に加えて、採用後に各種の研修を行うとされています。18ページには「各館研修」として、「館内整理日などに行います」「臨機応変に組み立て実施しています」とあります。しかし、当初TRCが考えていた「毎月第1木曜日の整理休館日」は、三田市当局の指示で撤回させられました。特別整理期間以外の「館内整理日」はゼロになったのです。前述の「館内整理日などに行います」は不可能になりました。また、研修に加えて、様々なイベントの企画・実施、学校等へ出向いての指導、トライアルウィークなど学生生徒の受け入れ、ボランティア団体などとの日常的な連絡調整等々、提案書を見ただけでも多くの仕事が列記されています。これらのことをどのようにシフトに組み込むのか全く不明です。

研修やシフト表に示されていない業務をどうこなすのか、詳しい説明を求めてください。

 ★雇用(10、16ページ)

 雇用については、提案書は「地域情報に熟知し、愛着を持ってサービスを行う地域住民の雇用がサービス向上の柱となります」として、現在就労中の職員を雇用したい」と書いています。しかし、これは実現できるかどうか、まだまったく分からないことです。また、「明確な賃金体系と福利厚生制度で雇用が安定し、離職率が低くなっています」と記されています。しかし、離職率の数値は示されていません。スタッフの時給、月給も示されていません。現在就労中の職員の希望者すべてを雇用するとしているのですから、待遇面を具体的に明らかにさせる必要があります。三田市は「ワーキングプアを生むような企業は指定しない」としてきました。待遇面にも責任を持たなければなりません。

TRCが現在指定管理者として運営している図書館の雇用者の変動率を数値で示させてください。入社したうちの何人が5年間継続して務めたかは、一つの目安になります。また、図書館スタッフ全体の離職率も数値を示させてください。水準書にこの点の指示がないのは疑問ですが、給与については、現在の水準と指定管理移行後の比較を明らかにさせてください。

★配架・書架整理・蔵書点検(29ページ)

勤務シフト表には「配架・整理」が組み込まれていて、日常業務としてこなすことになっています。現在は特別整理期間(年7日)以外に、月1回の整理休館日(第1木曜)が設けられています。また、半休日の月曜日にも整理作業が行われていたと聞いています。提案書には「返却された資料の速やかな配架を実施していきます」と書かれています。図書館運営にとって、配架と書架整理作業が利用者の利便性を維持するため、極めて重要であることは言うを待ちません。

配架・書架整理作業は、すべて日常業務内で行うことになりますが、現実に可能かどうか、直営での作業量データとの比較を明らかにさせてください。

また、蔵書点検は年1回7日間の特別整理期間に行われます。これについては、「人員の配置、疲労のたまらないローテーションと工夫を重ね、常に期日内での遂行を徹底しています」と書かれています。さらに「棚の図書をいったん移動して書架の清掃を必ず行っています」とも記述されています。40万冊近い蔵書を1週間で移動→清掃→配架するとなるとかなりの労働量になります。点検で破損等が見つかれば修理も必要で、リストと照合し欠落しているものがあればその処理もしなければなりません。本当に可能でしょうか。

月1回の整理休館日まで廃止して本当に蔵書点検大丈夫なのか、具体的に質してください。同規模の他の図書館の作業実績データを要求して下さい。

★レファレンス要員(6、30ページなど)

「専門性の高い対象別サービスには経験を有するレベルの高いスタッフを配置します」と書かれています。レファレンスはまさに専門性が高く豊富な知識と経験、さらには人間的洞察力も必要とされます。こうした業務の中心となるのは、チーフ、サブチーフと考えられますが、チーフの経験年数条件は3年以上、サブチーフは1年以上とされています。「以上」という表記ですから上限はないわけで、経験豊かなスタッフを雇用できる可能性がある半面、最高でも経験3年程度の人材しか得られない可能性もあります。後者の場合、高度のレファレンス能力はほとんど期待できません。

高経験者の地元採用ができなかった場合、三田の事情に通じて高度のスキルを持つレファレンス要員を確保する準備をしてるか、目算はあるか、を確認してください。

⑤その他

★貸出期間と冊数(24ページ)

市民の要望が強いとして「水準書」に盛られた「貸出期間の延長、貸出点数の増加」は見送られました。「1年間の運営経験を得て、改善すべきと考えられるときには、三田市にまず相談させていただき、相互に慎重に検討していきます」となっています。極めて消極的な姿勢です。期間の延長、冊数増は特段の努力をせずとも直ちに実現できることです。

水準書に特記された事項が何故見送られるのか、どこに問題があるのか、三田市はそれで了承できるのか、質していただきたいと思います。

 と、書きましたが、わたしたちは三田市の要求自体に問題があったと考えています。貸出期間が長期化し冊数が増えれば、図書の回転が悪くなります。また、返却意識が希薄になる懸念があるなど、多くの問題が生じる恐れがあるのです。現行の期間・冊数を詳しく検証することもなく、安易に水準書に書いたこと自体が、三田市当局の図書館に対する理解の低さを証明するものではないかと思います。 

★バーコード一体型ICタグ(26、27ページ)

 目玉の一つとされる「バーコード一体型ICタグ」貼付は、来年度の新規購入図書から実施されます。タグは1冊について30円かかりますが、新規購入分は本の価格に含まれるので「新たな費用は発生しない」と書かれています。本代が30円上がるのですからこうした書き方は不誠実です。タグの貼付は始まりますが、システムとしての運用が同時に可能になるわけではありません。

水準書では「3年程度で全面供用を」と求めましたが、提案書では「次期システム更新時に照準を合わせて」としており、時期の明示はありません。いつのことになるか分からないわけです。さらに、システム構築には2185万円かかるとされ、しかもこの金額には運用に伴うIC機器類(ゲート、自動貸出機、リーダライタ等)の費用は含まれていません。もっと多額の費用が掛かり、それがすべて市の負担になるのは当然です。

TRCは、「すでにある蔵書にタグを貼付する作業などには、国の交付金、緊急雇用対策などを利用する方法があるので、提案させていただく」としています。しかし、これも受けられるかどうかは未知数のこと。ICタグについては、指定管理になればすぐにも実現するかのように説明されてきましたが、実態は多額の経費が掛かり、その導入計画も国の資金を利用できれば……、というお粗末なものです。来年度から始まる新刊書への貼付は従来のバーコードと同じ働きしか果たせません。将来に備えてタグを付けておくという程度のことです。

自動貸し出しサービスなどがいつ実現するかは皆目わかりません。こうした点もしっかり明らかにしてください。

★自治体史・歴史資料検索閲覧システム「TRC-AEDAC」(73、74ページ)

 提案書に「三田市史一般公開事業のご提案」という項目があります。地域史料をデジタル化しネット上に公開・発信するというもので、これも目玉の一つです。ただ、これもTRCがすでに「システムを開発した」ということに過ぎず、三田市が活用しようとすれば、まず既存史料のデジタル化をしなければなりません。史料テキストの入力、画像取り込みなどは簡単なことではなく多額の費用がかかります。これも「次期システム更新検討」の際に考えましょうというのが提案の内容です。ICタグの場合と同じように、振興助成事業、各省庁の交付金などの申請についてもお手伝いをします、と書かれていますが、いつ実現できるかは全く分からない話です。目玉でもなんでもなく、TRCの自社ノウハウ売り込みに過ぎないのではないかという印象を受けました。

 どの程度の具体性がある計画か明らかにさせてください。

★障害者サービス(31ページ)

 障害者サービスとしては、障害者への対応の研修、館内環境の整備、録音、点字資料の収集などが列挙されていますが、極めて常識的なことばかりです。音訳サービス、点訳サービス、手話サービスなど障害者が最も必要としているサービスについての言及は皆無です。「ボランティアとの協働」の項目に、TRCがこれまで他の図書館で「ボランティア協力の基、行ってきた業務の一例」として、点訳、音訳、デイジー作成などが挙げられているだけです。つまりはすべてボランティア任せということです。「新たなサービス」も「サービスの拡充」もどこにも書かれていません。

★ボランティアとの協働(32ページ)

 TRC提案書には「図書館は市民のボランティア活動を受け入れる場としても適しています。現在活動されている各ボランティア団体と引き続き連携を図っていきます」「図書館を通して市民参加を図れる場を提供する」とあります。こうした認識は、現実にボランティア活動を現に行なっているグループの認識とは大きくずれていると考えます。

現在、図書館にかかわっているボランティア活動は、「本来、公立図書館が行うべきサービス」を図書館が提供しようとしないため(できないため)、市民有志が自主的・自発的に肩代わりしているというのが実情です。「活動を受け入れる場として適している」「市民参加を図れる場を提供する」というは、「場を提供してあげるからやってみなさい」という姿勢です。これがTRC基本認識で、それを三田市が容認するとすれば全くの的外れです。「本来、自己の業務」という認識を欠く、このような上から目線の態度では協働など成り立ちません。

また、図書館年報にボランティア活動として挙げられているのは、「対面朗読」「点字タグ・点訳絵本・点訳資料作成」「音訳図書作成」の3グループのみです。読み聞かせ、お話会などその他の多くのグループは「自主活動グループ」の扱いで、ボランティアには数えられていません。学校図書館ボランティアとの関係については記述すらありません。こういう状況を見て、TRCの「場の提供」という認識が生まれたのかもしれません。いずれにしろ、「本来図書館が提供すべきサービス」という認識がゼロですから、図書館ボランティアがさらなる進展を見る可能性もゼロです。ボランティア保険を負担する、養成講座を実施するとの記述はありますが、具体的な手続等には触れていません。極めて不十分だと考えます。

ボランティア活動の本質についての議論を期待します。

★個人情報の保護体制(58、59、60ページ)

提案書で述べられているのは、プライバシーマークを認定取得しているとか、本社に「個人情報保護士」資格保有者がいるとか、「個人情報保護マニュアル」を作っているとか、社内体制が中心です。「社員全員に研修を行い周知、遵守します」とも書かれていますが、前述したように研修の時間が取れるかどうかさえ甚だ疑問です。また、書かれているのはいずれも「心構え」「宣言」に過ぎず、裏付けになっているのは、社員からの「誓約書の提出」だけです。情報漏洩があったとしても、公務員と違ってそれだけで刑事罰が科されるわけではありません。宣言や心構えだけでは何の保証にもなりません。

 せめて違反者の処分、管理者の責任の取り方を明示させてください。

⑥終わりに

 以上、まだ幾つかありますが、時間的制約がありますので今回はここまでとします。わたしたちは、万が一、TRCを指定管理者に選定するにしても、

 専任の市職員複数を図書館に常駐させる。

 市の権限を仕様書に詳細に明記する。

 監視機関は市民の代表を中心に構成する。

 図書館協議会を作り市民の声を運営に反映する

などを求めて行きたいと考えています。しかし願わくば、このように疑問点の多いTRCを選定しないことを期待しています。           

三田市の図書館を考える市民の会ホームページ

inserted by FC2 system