傍聴記その6-

 

「町の本屋さん」存亡の危機

 三田市立図書館への本の納入は、図書館発足の1990年からTRCがほぼ独占している、と「傍聴記その6-①」に書きました。そして、市内全小中学校の学校図書館への納本も、数年前からTRCに切り替えられ、市内の書店はわずかに残っていた市場をも奪われてしまいました。現在、三田市内の書店は利用者のリクエストで急遽必要になった本と、雑誌類を扱えるだけになっています。そのうえ、最近ではTRCの納入処理もスピードアップされ、リクエスト本についても対応を始めたようで、地元書店の扱う量はどんどん減っているそうです。

学校図書館の本もTRC独占

学校図書館の本については、数年前までは三田市内4書店でつくっている「三田市図書納入協力会」が扱っていました。それが事前の相談などまったくなしにTRCに変えられてしまいました。協力会には事後通告だったそうです。変えられたのには大きく二つの理由があったようです。

 一つは前に書いた「MARC(マーク)」です。それまでは、教職員や学校図書館ボランティアがマークを作っていました。もう一つは「装備」です。これは本をビニールカバーでコーティングしたり、ラベルやバーコードを貼ったりする作業です。これも先生やボランティアがやっていました。それをTRCが「すべてうちでやって納入する」として納入権を獲得したといいます。事前に相談してもらえれば、協力会でも対応できたと、関係者は今でも憤っています。

協力会”代行”の形で5%の手数料

図書館の本をTRCに任せることになった1990年当時、さすがに「地元書店潰し」という批判を恐れたのでしょうか、TRCから地元書店に若干の利益を配分する「方策」がとられることになりました。この間の詳しい事情は、20年以上も前のことで詳しくはわかりません。

ただ、その「方策」は以下のようなもので、今も生きています。
 本の納入はほぼすべてTRCが行っています。TRCへの実際の発注はほとんどが図書館からオンラインで行います。しかし書類上は、図書館から図書納入協力会に発注する形をとります。それらの本がTRCから図書館に送られ、TRC三田のスタッフが図書館本館で装備作業をして正式に納入します。代金は協力会が装備費を含めて図書館に請求し、その金額の5%を事務代行費として受け取る――というものです。つまり、図書館からの発注と代金請求事務を協力会が代行する形をとり、TRCはその手数料を支払うわけです。緊急を要する利用者のリクエスト本・雑誌等は、図書館から手書きで図書納入協力会の当番店に発注し、当番店から納入されます。これらの本の装備もTRCの現地スタッフが行います。協力会からは5%の値引きで納入するそうですが、この5%が装備代なのでしょうか。

5%マージン廃止、地元書店いじめ

以上が三田市の図書館への書籍納入方式です。地元書店から納入権を取り上げる代わりに5%のマージンを支払うという形になったのだと推測されますが、先述の通り詳しい経緯はつかんでいません。

 TRCが指定管理者になれば、本の買い手も売り手もTRC自身です。発注・請求の事務代行など不要になります。5%の手数料は早晩、あるいは直ちに打ち切られる運命にあると考えていました。案の定、11月26日のまちづくり委員会でTRCスタッフは「図書納入協力会との契約を見直します」と明確に語りました。さらに、「今後は雑誌類の納入だけを協力会に委託する」と表明しました。予想通りです。

実は、TRCはすでに10月末に協力会の当番店に電話をし、「申し入れ」をしたと聞きました。その時は「雑誌とリクエスト本をお願いしたい」と言っていたとのこと。「リクエスト本」もこれまで通り残すと表明することで、「地元貢献」姿勢をアピールしたかったのではないか、と関係者は推測していました。その推測はまさに的中しました。候補に決まった途端、「契約見直し=5%マージン廃止」「地元からは雑誌だけ」に態度を変えたわけです。地元貢献どころか、まったくの逆行、「地元書店いじめ」に他なりません。図書納入協力会では困惑していると聞きます。

三田市から「町の本屋さん」を無くしていいのでしょうか。本屋さんは商店街の中にあるもう一つの「知の拠点」です。指定管理者制度にするなら、本は地元書店から買うように義務付けるべきです。それができないなら、せめて地元調達を増やすことを条件にすべきです。議員の皆さん、何よりもまず三田市図書納入協力会の意見を聞いてください。

三田市の図書館を考える市民の会ホームページ

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