傍聴記その7-①(まちづくり常任委)

TRCを図書館指定管理者に

僅か1時間余の審議で可決

 

 12月11日、市議会まちづくり常任委員会が開かれ、「三田市図書館条例の一部改正について」と、「三田市立図書館の指定管理者指定について」の図書館関連2議案が審議されました。図書館条例改正は、指定管理者制度導入を前提としTRC提案に沿って開館時間などを規定するもので、これが可決されれば即TRCが指定管理者になる、ということです。二つの議案は表裏をなしています。この日の委員会審議が実質的内容に立ち入ることのできる最後の機会でしたが、僅か1時間余りで質疑は打ち切られ、2議案はあっけなく可決されました。

 審議の模様を詳しく報告します。まず、「図書館条例」から述べます。

 図書館から市職員は全く居なくなる

条例改正の主な点は、まず、第3条(職員)の「図書館に館長、専門職員、事務職員その他必要な職員を置く。」を削除するというものです。委員からは、他の条項に「館長」という表記があるのに整合性を欠く、などと形式上の質問が中心でした。しかし、9月に行われた図書館条例の改正で、「館長」はすべて「指定管理者」と読み替えると規定されているのですから、やや的外れという印象でした。第3条削除の本当の目的は「指定管理移行後の図書館に市職員は一切置きません」という明確な意思表示なのです。わたしたちは、直営をやめた後も図書館に市職員を常駐させ監理・監督にあたるべきだと主張していますが、それに対する明確の拒否という意味があります。この点を質して貰えなかったのは残念です。

 開館時間、藍分室だけ何故短い?

条例改正の第2点は、TRCの計画書通りに各館の開館時間を具体的に規定したことです。本館と分館が午前9時から午後8時、藍分室が午前10時から午後6時です。ただ、館長(指定管理者)の判断で臨時に変更できるとされています。

わたしたちは分室だけが短くなっていることに疑問を持っています。元々開館時間の延長は「個々の具体的データによるのではなく、とにかく利用条件・環境をまず拡充するのが目的」というのが市の主張でした。この点、議員からは「利用実態を踏まえたのだろうが…」との質問がありましたが、差別した理由を追及するまでには至りませんでした。分室はほとんどが午後からの開館だったわけで、利用実態をつかむ術すらないのです。何故、本館分館と分室を差別するのか知りたいと思います。藍地区の利用者はどう考えるでしょうか。

「運営評価委員会」が作られるが…

 第3点は、附則で「三田市立図書館運営評価委員会」を設置するため、関係条例を改正するというものです。この委員会は第三者の目で指定管理者の図書館運営を評価するためのものです。委員は学識経験者・市民ら7人、任期は2年とされています。質問に答えて市側は、市民委員は1人、その他に自治会長代表を1人入れるとしました。市民代表の選考方法については、公募するかどうかこれから検討すると答えました。偏った意見の人が入らないようにと発言した議員さんがいたのに少々驚きました。どんな意見の人を想定しているのでしょう。また、委員会審議の透明性を確保せよという意見も出ました。公開して議事録を作れということなら分かるのですが、「利害関係者云々」の発言もあり理解に苦しみました。

市側からは「無作為で選ぶのも一つの方法」との答弁もありました。どんなやり方をするのでしょう。この種の委員会や審議会には、市側の息のかかった人、市の考えに近い人が選ばれるのがこれまでの通例です。三田市としては選定した指定管理者にちゃんと仕事をしてもらわなければ、自らの責任になりますから、厳しく監視して辛口の評価をしたりするような人を選ぶわけがありません。「偏った考えの人」は決して選ばれません。評価資料も委員自ら集めるわけではなく三田市が提供します。ここでまず甘い評価の素地ができます。評価委員会といっても、要は体裁を整えるだけになる可能性が大です。

 幾つもの疑問に「決定後に協議」と答弁

 次の案件「三田市立図書館の指定管理者指定について」は、指定管理者にTRC三田(株式会社図書館流通センター)を選定する、というものです。これについては、「現職員の雇用問題」「地元書店からの本の購入」「選書・除籍」「逐次刊行物」「視聴覚資料」「移動図書館」などについての質疑が行われました。

 「職員の雇用」では、吉岡副市長が「TRCに行かない人については市が責任を持つ」と明言しました。しかし、「意向を聞く面談」と言いながら、実際には「TRCへ行くように」との圧力がかかっていると聞きます。職業選択の自由に干渉しないことを確約させてほしいと思いました。

 TRCが「雑誌だけ」としている「地元書店からの購入」については、「指定議決後に改めて協議する」という市側答弁がありました。一方で吉岡副市長は一般論として「できるだけ市内でとお願いしたいが企業主体の自由もある」という表現で、”当事者任せ”と受け取られる発言をしました。恐らくこれが本音です。「協議する」はリップサービスだけに終わることでしょう。

 TRCが選書の具体的方法を何も示していないことについては、「指定決定後に協議する」という驚くべき答弁でした。図書館運営の根幹に関わる部分をはっきり確認もせず、TRCを候補に選定したということです。市議の皆さんはこんなやり方で指定管理者を選ぶことができるのでしょうか。除籍についても同様です。「市の備品だから当然市が責任を持ってやる」というだけで、どの条例に根拠があるかも示されませんでした。

 TRCが「逐次刊行物」と「視聴覚資料」の購入を見直す(減らす)としている点については、「指定管理議決後、今後の利用動向を見て協議する…」と、これも先送りです。何ともお粗末な議論であきれるばかりでした。

 移動図書館については、先にTRCが「2年後の見直しの際に拠点の拡大も考える」と答えたことについて、長谷川委員が「市も同じ考えか」質したのに対し、吉岡福市長は肯定的な答弁をしました。移動図書館の巡回地域は2年後には広がるはずです。覚えておきましょう。

 委員長が発言制止、議員が発言妨害

 一番熱心に、そして唯一核心をついた質問をした長谷川美樹委員に対し、北本節代委員長は再三、「議案書にあることに絞って」と発言を制止しました。笠谷圭司副委員長も「これまでの委員会での質問と重複する」と委員長に加担しました。また「ええかげんにせぃ」と発言を妨害する議員までいました。これまでわたしたちは、市議会での図書館問題審議をできるだけ傍聴してきました。しかし、市当局の答弁は、「実績のある企業だから大丈夫」「しっかりしたノウハウを持っている」などと手放しでTRCを礼賛するばかりで、肝心のことになると「これから協議する」などの先送りばかりでした。TRCを呼んでの質疑でも、TRC側の一方的発言ばかりが目立ちました。まちづくり委員会の審議で疑問点が解明されたなどとはとても言えません。長谷川委員は真っ当な反論をして質問を続けようとしましたが、多勢に無勢という感じでした。

 9月議会の時もひどかったけれど、この日も発言をさえぎり無理やりやめさせたという印象を強く持ちました。委員会審議は過去、時間など気にせずに徹底審議をしたこともあるそうですが、図書館問題については、元々関心がない、問題意識も情熱も持たない、市側べったりの議員が多い、ということなのか、とにかく早く終わらせたいという姿勢ばかりが感じられました。他の議員の発言は組合サイドからのものだったり、まったく発言しない議員もいたりで、何ともお寒い審議ぶりでした。結局、実質的で具体的な答弁はほとんど聞けないまま、議論は1時間余りで打ち切られました。

 賛成5、反対1の圧倒的多数で可決

 採決の結果は、賛成5、反対1で二つの議案は可決されました。反対したのは長谷川美樹議員。賛成したのは、前中敏弘議員、厚地弘行議員、檜田充議員、笠谷圭司議員、大西雅子議員です。このことはよく覚えておきましょう。

 図書館の指定管理制度移行によって、開館日・開館時間は大幅に増えます。今の時点で”効果”と言えるのは、これだけです。しかし、これが本当に市民にとって歓迎すべきプラスに働く”効果”になるのかどうかは全く不明です。さらに、いろいろ言われてきた”改革”で具体的に示されたものはほとんどありません。すべてが「これから」の話ばかりです。逆に、開館時間拡充の陰で、あるいはそれが原因で、今より悪くなる部分があるのではないかという不安は大きくなりました。

図書館そのものだけではありません。特に三田の地元書店の皆さんが、また仕事を奪われてますます苦しい状況になることは確定的です。三田市民の支払った税金が地元を潤わさず、東京に本社のある会社に持って行かれる分が増える。その会社が払う税金は東京都に入り、三田市の税収はその分減ることにもなるでしょう。三田市は「地元振興」とは真逆のことをしているのです。

 三田市議会議員には月間49万円の報酬が支払われています。また、昨10日には120万5000円のボーナスが支払われました。年間でいくらになるでしょう。高給取りですよね。これだけの報酬を市民からもらっている人たちが、果たして図書館問題でちゃんと働いたでしょうか。質疑内容を聞いていても、自分でしっかり調べたと感じられる人はほんの僅かでした。こんな時こそ政務調査費を活用してほしいものです。大急ぎで質疑を打ち切るなどの姿勢を見ても、とても役目を果たしているとは思えません。きっと「図書館問題だけが我々の仕事ではない」という反論があることでしょう。常套的に使われる聞き飽きた反論です。市議の皆さんの大部分は、市民のためというよりも、市長や副市長のために働いている感じを強く持ちました。

通常、委員会で可決された案件が、本会議で覆る可能性は極めて低いのです。それでもわたしたちは、本会議で心ある議員の真っ当な議論が聴けることを期待しつつ、最終的に決められてしまうまで、誰がどう発言するかを含めて、しっかり見届けたいと思います。(2013年12月11日)

 

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