傍聴記その7-②(市議会本会議)

市立図書館を指定管理者に委託

賛成17反対4 本会議で可決

 12月市議会最終日の24日に、今議会に提出された全ての議案の表決(採決)が行われました。図書館関係では、「三田市立図書館条例の一部を改正する条例の制定について」と「三田市立図書館の管理に係る指定管理者の指定について」の最終的審議が行われました。両議案ともまちづくり常任委員会の審査では賛成多数で原案通り可決されています。そのことは「傍聴記その7-①」で報告した通りです。

 本会議での手続きは委員長報告→質疑→討論→表決と進みます。

北本節代まちづくり常任委員長は、委員会での主な論議内容を簡単に述べ、賛成多数で可決したことを報告、最後に<委員会で表明された意見や要望については、今後の図書館運営に十分生かされ実行されるようお願いするものであります>と表明しました。報告についての質疑はありませんでした。

図書館関係を含む全議案の委員長報告の後、討論に入りました。この日表決に付された議案のうち、「賛成」「反対」の討論が行われたのは図書館関係だけでした。

核心を突いた長谷川議員の反対討論

まず、長谷川美樹議員が反対討論に立ち、*開館時間の3時間延長が本当に市民の利益になるかは疑問だ。
*労働組合とは長期間にわたって議論してきたとされるが、一般市民は一切議論に参加する機会がなかった。市民に示されたのは6月議会が初めてで拙速に過ぎる。*図書館運営に関する民間ノウハウは未確立で手放しでは期待できない。
*図書館への指定管理導入は全国でも10%程度。まして本館への導入は1%ほどで、それも運営実績の上がっていなかった図書館に限られている。三田市のような質の高い図書館に導入する理由がない――などと述べた後、六つの懸念を示しました。

①導入ありきで事前調査が一切なかった。種々の対応策はほとんど導入後に先送りされたまま。

②現行体制より司書数が減少しサービス水準維持に大きな不安がある。

③地元書店への影響に配慮が足りない。

④正社員は1名だけ、あとはすべて1年契約の臨時社員というTRCの体制では責任体制に不安がある。

⑤摂津市の例のようにTRCが手掛けている図書館で、効果が上がっていないというよりむしろ低下している例がある。図書館の充実につながる保証はない。

⑥選書・発注・納品・廃棄のすべてをTRCが行う。市は監理体制を確立するとしているが、まだ具体的に何も提示していない。すべて管理者お任せだ。

以上を踏まえ長谷川議員は反対への賛同を呼び掛けました。長谷川議員の論旨は核心を突き、明快で確信に満ち説得力に富むものでした。わたしたち市民の会の主張と相通じるものが多く共感しました。

西上俊彦議員の賛成討論は100%市の代弁

続いて、西上俊彦議員が賛成討論に立ちました。西上議員の論旨は、これまでの三田市の主張、TRCの事業計画・提案を100%肯定した、正に市の代弁者としての発言でした。たとえば、*民間活力の導入が一貫した市の基本姿勢である。*郷の音ホールなど14施設に指定管理者制度が導入され成果を上げている。*市の役割を見直して民間活力を生かし、市の人材とノウハウを引き継いでもらう。*現職員について市は全員の受け皿を用意している。*市民と直接接触するのは民間業者だが、市に専門部署を設けしっかりと管理・監督する体制ができる。*市民と図書館との連携、ボランティア団体との懇談を通じて、一層の関係強化を図る。ボランティアに活動の場を提供できる――などなど、わたしたちが今まで市当局から聞いてきた「お話」の総ざらいでした。

<しかし、民間企業に絶対はない。TRCは委託費以外に利益を生み出す手段がないのだから、必要に応じて一般会計からの支出も視野に入れて支援してほしい>――これが西上議員の結語でした。唯一、自分の言葉のように聞こえたと思ったら、何ともご親切な民間企業への配慮です。市民への配慮は一切ありませんでした。傍聴席の後ろの方から「真正市民の会の中には似非市民の会もいるということか」というつぶやきが聞こえてきました(心の中で「うまい!!」と拍手しました)。演説の全般を通じ、ボソボソと原稿を読むだけで、賛成の熱意は全く伝わってきません。気が進まないのに指名されたのか、不承不承、嫌々賛成討論を行っているというやる気のない演説でした。

いよいよ採決! 結果はこうなりました

いよいよ表決です。起立採決で行われました。

図書館関係の両議案ともに反対したのは下記の4人です。

坂本三郎議員 中田初美議員 長谷川美樹議員 長尾明憲議員

 

 両議案ともに賛成したのは下記の17人です。

  西上俊彦議員 北本節代議員 関口正人議員 家代岡桂子議員

  前中敏弘議員 今北義明議員 福田秀章議員 森本政直議員

  笠谷圭司議員 平野菅子議員 松岡信生議員 大西雅子議員

  厚地弘行議員 肥後淳三議員 田中一良議員 檜田充議員 佐貫尚子議員

 議長の美藤和弘議員は表決に参加しませんので、「図書館へ指定管理者制度を導入する二つの議案」は、17対4の圧倒的多数で可決されました。 

市民のみなさん、この事実をしっかり記憶しておいてください。

指定管理制度導入を推進した人たち

もっと忘れてはならないのは、図書館への指定管理制度導入を闇雲に強行した三田市の当事者です。以下の人たちには将来的にも責任を持ってもらわなければなりません。

竹内英昭市長 吉岡正剛副市長 佐々木智文まちづくり部長 

下嶋健司まちづくり部次長 福本章彦図書館長 印藤昭一図書館副館長

また、図書館の本来の所管は教育委員会です。まちづくり部長らはその都度、教育委員会に報告し了承を得て計画を進めてきたと答弁しています。したがって、5人の教育委員の責任も将来にわたって重いと考えます。以下の方々です。

佐野直克教育委員長 虫明清子委員 中田勝夫委員 中島翠委員 

大澤洋一教育長(委員)

さらに、TRCを指定管理者に選定した指定候補者選定委員会の5人の委員も大きな責任があります。中には一度も図書館を利用したことがないと公言した方も含まれています。

 井上久仁子氏(学識者 図書館司書・湊川短期大学学生部学生課長)

 北野参則氏(会計学 公認会計士・税理士)

 土橋勝氏(自治会 三田市区・自治会連合会副会長)

 田中亨胤氏(生涯学習審議会委員 近大姫路大学教授・兵庫教育大学名誉教授)

 杉浦健氏(市民公募委員)

 以上、図書館への指定管理制度導入を主導し、積極的に関わった人たちの名前をしっかり記録し、そして記憶しておきたいと思います。

 

議員側の「お願い」連発に違和感

 委員長報告の最後に決まり文句のように付くのが市当局への「お願い」です。北本節代委員長は前述のように、<委員会で表明された意見や要望については、今後の図書館運営に十分生かされ実行されるようお願いするものであります>と述べました。この日、予算決算常任委員会の福田秀章委員長だけが「お願い」ではなく、「要望します」の文言を使いました。福田議員は副議長でもあるから「要望」でよくて、平議員が委員長の場合は「お願い」になるのか、などと”しょうもない”ことを考えてしまいます。議会事務局が作文するのか、委員長本人が書くのか分かりませんが、議会と市当局は対等のはずです。委員会質疑などでもこの「お願い」は乱発されます。どうして「お願い」なのでしょう。聞いていて強い違和感を持ちます。「要求します」「要望します」「求めます「必ず実行してください」」――言い方は幾つもあります。議会のみなさん、少しは役割を自覚してください。「お願い」などという卑屈な言葉を使わないよう要望します。

 坂本議員の質問を妨害、前中議員に退場命令

 さて、この日より前、18日の本会議ではこの二つの議案に対して、坂本三郎議員が「一般質問」を行いました。坂本議員はこの日、図書館問題だけでなく、「特別支援学校」「三田肉奨励」についても質問しました。

図書館問題については①何故拙速に指定管理制度を導入するのか。②図書館条例第3条を削除する理由。③司書の今後の配置。司書数を減らすTRCの提案でサービス向上が可能か。④地元書店への影響。⑤市民への情報公開、アンケート調査などで丁寧に市民の声を聴き時間をかけて決めるべきだ――の5点を質しました。

 三田市側の答弁は、従来からの趣旨を繰り返すものでしたが、表現がオーバーに、居丈高になっている印象も受けました。幾つか挙げましょう。

 <今回の提案は市民から直接の多くの意見議員を通じての強い要望に基づくもので、制度導入の必要性については市民にも十分に理解してもらえていると考える>。たった数件の市民の意見が、いつの間にかまた「多くの意見」という表現に戻っています。<直営では絶対に不可能な改革で、市の財源をこれ以上投入できない><市民には広報やホームページで丁寧に説明する。ボランティアとは話し合いを持ってより満足してもらえるよう努める>。これらの答弁も聞き飽きた紋切型です。ボランティアとの話し合いと言いながら、いつどういう形で、という具体的計画は相変わらず一切示されません。<組合側から10月に、開館時間の拡大について初めて提案があったが、市の目指す水準とは大きくかけ離れた内容だ>との答弁がありました。その具体的内容については、市側からも組合側からも全く明らかにされていません。また、地元書店からの本の購入については、<指定管理者の議決後、TRCに地元書店と協議し十分な配慮をするようお願いしたい>との答弁がありました。ここでも「お願い」です。大手企業にはこのように低姿勢で、地元零細業者には冷たい、そういう印象です。

 さて、坂本議員の質問に対する当局の答弁が長くなり、再質問の時間はわずか2分ほどでした。坂本議員が市民の会の陳情署名について再質問を始めた途端、前中敏弘議員が「なんで同じことを何遍も聞くんや!」などと大声を発し、発言を妨害しました美藤議長が注意しても止めません。坂本議員が「うるさい、黙って聞け、俺は当然の権利として質問しているんだ!」と大声で抗議したところ、前中議員も立ち上がって怒鳴り返し、議場は騒然、混乱状態になりました

 「退場、退場」の声が飛び、美藤議長が「前中議員、退場を命じます」と宣言、傍聴席からは期せずして拍手が湧きました。前中議員は議場を出ましたが、直後に今北義明議員が立ち上がり「議長、なんで退場させたんだ」と大声。「動議なのか」の声に、「動議だ」と今北議員。議長が動議に賛成の議員の起立を求め、今北、福田、森本、笠谷の4議員が起立。動議を審議するため本議はいったん休憩、議会運営員会が開かれることになり、議員たちは議場を後にしました。

 わたしたちもここで退席しました。

退場命令は前代未聞とか、驚きました

 後で消息通に聞きますと、三田市議会での退場劇は前代未聞とのこと。図書館問題は推進派にとってそれほど重大な案件だったのか、それとも反対は共産党だけと思っていたら、それ以外の会派からも反対者が出たことに怒ったのか、これほど激しく妨害した意図は何だったのか知りたいものです。しかし、正直驚きました。

 さて、その後聞いたところでは、議会運営員会では、議長の退場命令は妥当ということに何となく落ち着き、議長は本会議で経緯を説明する、傍聴席からの拍手を制止・注意しなかった点について遺憾の意を表明する、ということで決着したそうです。再開後、そのようにセレモニーが行われたとのことです(再開後の本会議を傍聴していないので不正確かもしれません)。

 この日の一般質問で野次を飛ばしていたのは、前中議員ただ一人でした。どうもこのお方は「病的なヤジ魔」のようです
何とかメモできたものを列記します。

 「不安を煽っているのは君たちだ」

(長谷川議員の「特定秘密保護法」質問に対し)

 「議長辞めてやってほしかったなぁー」

 「自分の会派が纏められん奴が何言うとんのや」

   (いずれも坂本議員の「図書館」質問に対し)

 「何で拍手してるねん。統一会派が笑うよ」

(坂本議員の「図書館」質問で、「市民の声を一切聞かない」に議場から拍手が起きた時)

 「何で今さらそんな詳しい答弁がいるねん。おかしいだろ」

(坂本議員の「図書館」質問に対し市当局が答弁中に)

 このようなヤジの連発の後、最後の坂本議員との応酬につながったのです。これらのヤジを見ても分かる通り、ヤジとしても低級なものばかりです。まして、わずかな再質問時間を有効に使おうとしている矢先に発言妨害におよび、結局坂本議員の質問権を奪った行為は、民主主義議会の議員として失格です。退場どころか懲罰ものだと市民感覚としては思います。前中議員はわたしたちが傍聴した時、毎回ヤジを飛ばし、隣席の同僚議員と私語を交わし、議会の権威を失墜させる行為を繰り返していました。多くの傍聴者が議会事務局のアンケートに、名指しで批判を書いているそうです。確信犯・常習犯なのです。聞くところによれば、前中議員は議長経験もあり、今では22人の議員中、最古参とのことです。本来ならば重鎮として同僚議員の尊敬を集め、市民の信頼も得られる立場にあるはずです。それがこのように毎回、傍聴市民の顰蹙を買う行為に出るのは何故なのでしょうか。理解し難く歩む道を誤っているとしか感じられません。

 

退場抗議の今北議員に『恥ずかしくないのっ!』

また、今北議員が「動議」を出して、議運委開催のため議場を出ようとした時、傍聴席から「今北さん、恥ずかしくないのっ!」という女性の声が飛びました。顔見知りの人のようでした。今北議員は一瞬振り返ったものの反論もできず議場を出ました。今北議員たちは、議長が傍聴席からの拍手を制止しなかったことを議運委で批判したそうです。動議に賛成したのは前中議員と同会派「草莽の会」の所属議員で自民党系の人です。自民党は、米欧の近代民主主義とその政治制度に「価値観を共にする」政党かと思っていましたが、どうも違うようです。反対派議員の発言を暴力的言辞で妨害して憚らないこんな議員に、市民をとやかく言う資格はありません。議長の退場命令は当然ですし、傍聴席からの拍手の方が真っ当です。

 もう一つ、今北議員の動議に副議長の福田議員も起立して賛成しました。議長・副議長は協力して議事運営にあたる責任がありますが、「議長に対する非難的動議」に副議長が賛成するのは、議会運営ルールとして妥当なのでしょうか。動議なのかどうかもはっきりしない発言、議事手続きさえ知らない委員長もいて(これはまちづくり委員会の審議で感じたことですが…)、三田市議会議員の資質を改めて考えさせられました。

市民の会は息長く取り組みます

 以上のような経緯で「図書館運営の民営化」は議決されました。今後、現図書館との事務引き継ぎや、「決まってから…、決まってから…」と先送りされてきた懸案事項がいよいよ具体化するはずです。しかし、その一々が公表・公開されるとは限りません。「市民への説明」にしても繰り返し言われたのは「広報、ホームページなどを通じて」です。「直接説明の機会」を作る意思は毛頭無いようです。注意していないと見過ごしてしまいます。それでも、市は「ちゃんと知らせた」と言うのです。また、ボランティア団体とは直接話し合うとされていますが、いつどんな形になるのか、果たして市の当局者が出てくるのか、話し合いもTRCお任せなのか、皆目分かりません。

嘱託やパートの現図書館職員のみなさんが、どういう選択をするかもこれからです。この点についてわたしたちは、まず「自分の生活を最優先して、自由意思に基づく賢明な選択をしてほしい」と願っています。市当局には決して介入したり、圧力をかけたりすることの無いよう、また選択した方向の如何にかかわらず、約束通り「全員継続雇用」の責任を果たすことを強く求めます。

 わたしたち「三田市の図書館を考える市民の会」は、図書館の指定管理が正式に決まったのを受けて、今後の活動方針を改めて打ち出したいと考えています。こういう事態になっても「市民のためにより良い図書館を目指す」という基本方針は変わりません。わたしたちの出発点は「ちょっと待って」でした。しかし、市当局の完全黙殺の態度に「反対せざるを得ません」へ方針を転換しました。そして今、指定管理制度そのものへの疑念は増すばかりです。また、それ以上に三田市当局の「行政手法」に危険なものを感じています。形式的な手続き論だけを強調し、市民の声を真摯に聞くという姿勢が全くありません。市長選でも一切主張することのなかった”図書館改革”を突然持ち出し、「永年の懸案でいつまでもだらだら長引かせるわけにはいかない。行政にはスピードも必要だ」などと言い出す竹内市長の姿勢は、誠実な態度とはとても言えません。民主主義を形骸化し、市長のやることに文句を言うなという強権的姿勢です。今後もこうした手法が繰り返されかねません。考えようによっては、図書館そのものの問題より深刻です。

わたしたち市民の会は、図書館問題を契機にして多くのことを学びました。今後も息長くこの問題と付き合って行く決心です。                                                      (2013年12月24日)

 

三田市の図書館を考える市民の会ホームページ

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